斉藤和義の2025年ツアー「カモシカとオオカミ」に参戦した。金沢でカモシカ、長野でオオカミ。二日連続で野生動物を聴きに行くようなものだが、本人は相変わらず衰え知らずの声と姿で、こちらの年齢だけが着実に進んでいる気がした。周りのご同輩も着実に年齢という名の年輪を積み重ねている。みんな、いろいろあっただろうけどまたここで元気に集まれてうれしいね、と勝手に人さまもいろいろあったことにする。
長野に来たついでに、初めて善光寺へ。あの有名な「お戒壇めぐり」に挑戦した。真っ暗な通路を手探りで進み、極楽の錠前に触れるとご利益があるという。昔、意地悪なおばあさんがここを通って信心深く生まれ変わったという逸話もある。私も一回生まれ変わったほうがいい。少し並んで、順番に階段を下りていよいよ「お戒壇めぐり」の始まり始まり。
え。マジ暗い。漆黒の暗闇。真っ黒。怖い。
びくびく進む。私の後ろは知らない男児だ。お父さんと並んでいた。動揺してはいけない。大人なのだから。進むこと数分。前情報通り腰の高さに手を固定していたおかげで、無事錠前にタッチ。後ろの男児も「あった」とつぶやいている。良かった。
暗闇からでて光を感じた時、それだけでありがたいと感じた。日の光がこんなにありがたいとは。当たり前のことなど何もないんよね。生まれ変わっていい人になります、人に優しく、特に年老いた両親に優しく接します、とお日様に誓った。
(余談だが、この誓いをたてた二日後、父親の大腸がんが発覚。期せずして誓いは果たされることとなるのだが、それはまた別の話。おかげさまで父親は手術して治りました。)
清らかになった私は、長野大和へ。デパート大好き。ふらふら歩いていると、スワロフスキーの指輪が目に飛び込んできた。ガラスが大きい。存在感ありすぎ。だが、私くらいの年齢になると、これくらい大きいほうが映えるのだ。
じーっと見つめていたら、店員さんがにこやかに「つけてみます?」と声をかけてくれた。指にはめてもらった瞬間、心を奪われる。旅のテンションもあって、心がぐらつく。
「2万円かあ。旅の記念に買おうかな。でも安くはないしなあ」
そんなふうに迷っていたら、店員さんが決定打を放ってきた。
「これ、リバーシブルなんですよ(ニヤッ)」
リバーシブル? 指輪が? と驚いていると、ガラス部分がくるりと裏返り、奥ゆかしいかわいらしいピンク色が出現。こんなん拒絶できる女子っていてはるのん?無理やろ。


「いただきます」
反射的に言っていた。店員さんの「ありがとうございます」が、どう聞いても“勝った”という響きを含んでいた。まあよい。
善光寺で生まれ変わった直後に散財するという、この矛盾こそ人生の味わいである。あの旅の勢いと、ライブの余韻と、店員さんのニヤッとした笑顔と、全部ひっくるめて、この指輪は今でもお気に入り。家にいるときもつけている。
少しの背伸びで、大きな満足。スワロフスキー最高。

