娘が大学生の時、coachの黒のショルダーバッグを買った日のこと。
「お母さんも何か買っちゃおうかなー」なんて軽く言ってふらふらと店内を歩いていたら、白いシグネチャー柄のバッグがこちらを見ていた。
値札には“50%OFF”の文字。4万円。
悩むこと数時間。一回店の外でお茶する時間をとって、じっくり考えた。決めた。わたし、買う。あのバッグ。
53歳にして、人生初のブランドバッグである。
当時はJLo(ジェニファー・ロペス)がCOACHのアンバサダーで、彼女プロデュースの“Hutton(ハットン)”がとにかく可愛かった。私はJLoに憧れていた。同じ年なのに、何てゴージャスな、とうっとり見ていた。お前はJLoと路線がかすりもしないだろと誰か当時の私に言ってあげてほしい。JLoを夢見て筋トレに励む当時の私に。
とにかく私はそのHuttonが欲しかった。JLoのように明後日の方向に目線を外して決めてみたい。でもHuttonは定価であった。そして田舎暮らしの私が、あの小さめの都会的バッグをどこで使うのかという問題もあった。
冷静に考えれば考えるほど「これは私の生活に合わない」と分かる。
そこで選んだのが、あの白いシグネチャー。
大きめで、気取らず、でもちょっと華やか。
結果は大正解で、今ではちょっとした外出の相棒になっている。
COACHは、ドンキやイオンにも並んでいて、“ハイブランド”ではない。
でも、作りはしっかりしているし、デザインも幅広い。
ものすごく気に入ったデザインがあったら、気楽に使えてちょうどいいと思う。
最近は、3〜4万円のCOACHをちょっと奮発して買うのが密かな楽しみになっている。
昔の私なら考えられない変化だ。
でも、投資信託(S&P500)が順調に育っているのを眺めていると、
「ハイブランドのバッグをひとつくらい持ってもいいのかも」
なんて、ふわっと思えてくる。
57歳にして、物の選び方が少しずつ変わっていく。
これからどんなふうに価値観が育っていくのか、自分でもちょっと楽しみだ。

